かりん並木 [長野県諏訪市]
長野県の諏訪湖畔に整備された美しい「かりん並木」をご存知でしょうか?
その名を聞けば、当然、「カリン」の木が植えてあるものと思うところですが、実はそのほとんどが ”かりん” ではなく「マルメロ」です。(一部、本来のカリンも植えられています)
それなら「マルメロ並木」じゃないかと言われれば、その通り。
ではなぜ ”マルメロ並木” が「かりん並木」と呼ばれているかというと、そのきっかけは、江戸時代にまで遡ります。
江戸時代に諏訪地方に持ち込まれた「マルメロ」ですが、持ち込まれた時点で既に「かりん」と呼ばれており、単に諏訪地方の人々が間違えたというわけでもなさそうです。
江戸時代の文献「本草綱目啓蒙」にもマルメロとカリンを正しく区別出来ていない記述が見られることから、当時の人々の中で「マルメロ」と「カリン」の区別は、とても曖昧なものだったのではないでしょうか。
情報社会の現代では、ちょっとスマホで検索すればその場で誰でも区別出来ることですが、これは江戸時代の話。
特徴がよく似た見慣れぬ外来果実を、混同するなという方が難しかったかも知れません。
明治の頃には、この「かりん」と「マルメロ」の混同問題について盛んに論議されたそうです。
やがて行われた専門家による鑑定の結果、「諏訪地方に栽培されているカリンと称するものは,その実カリンに非ずしてマルメロなり」という事実が立証され、長年に渡って行われた ”かりん・マルメロ論議” には終止符が打たれることとなったようです。
しかし、何百年と「かりん」の名で定着した文化はそう簡単には塗り替えられず、その後も現在も「マルメロ = かりん」の名で親しまれています。
地域の人々の間での ”通称” としてだけであれば、「マルメロ = かりん」としても特別大きな問題にはならなそうですが、一昔前までは、「マルメロ」を加工した食品の原材料表記にも単に「かりん」とだけ記載しているケースが多々あったようです。
これは、JAS法の加工食品品質表示基準に抵触することであり、消費者からも指摘があったことから、現在は「マルメロ (かりん)」と表示するなど、諏訪地方の呼び方を大切にしつつ適切な表示となるよう工夫されています。
諏訪で「マルメロ (かりん)」のような表記を見掛けると、その表記にどれだけの歴史背景があり、地域の人々の想いが込められているのか、しみじみと考えさせられることがあります。
私のような外部の者からすればなんとも紛らわしいことではありますが、歴史の一端を垣間見ることが出来る貴重な文化として、いつまでも大切に遺していって欲しいものです。
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